風水龍王と大蛇・豊玉姫(高良玉垂宮伝承)

高良玉垂宮神秘書 訳文』より

■天神七代

 天照大神その素戔嗚尊へを持て余して天の岩戸に籠った。日の神が籠ったので日本は暗闇となった。その時五人の神楽 八人の女性 笛を吹き鼓を打ち拍子を揃えて神楽をはじめた。面白いかと思い扉を少し開いた。人影が見えたのでひたちの国の戸隠明神が扉を開いた。その時より「おもしろい」とは「面白い」と書くようになった。

 天岩戸の後(中略)樋の川の奥へ入った。その川の川上より箸一対流れてきた、人が在ると思い、川伝いに入ると。片原に在家が見えてきた。立ち寄って見てみると、夫婦と姫一人が見えた。泣き悲しんでいるので。スサノヲ尊は尋ねてみた。「何事か?」答えは。「この浦は三年に一度、この川に「いけにえ」があり。今年はわが姫に当たりました、男の肌に触れない女を「いけにえ」に供えなければなりません。」という。スサノヲ尊は訳を聞いて。「ここに至って、そういうことであるならば、悪龍を退治すべし。」と言った、翁は答えた。「お願いします。」と喜んだ、翁夫婦の名を足名椎(あしなつち) 手名椎という。姫の名を稲田姫云った。スサノヲ尊その意を得て、まず、「ヤハシリ酒」という毒酒を作って、舟一艘に積み、上の社に段を構え、姫の形に人形を作り置いた。

 風水龍王、人形の形が酒に映って、酒の下に人があると思い、毒酒を飲み干す。もとより、かくのごとくせんがための企みであれば、川岸に酔い臥した。スサノヲ尊、これをご見てトツカの剣を抜き、散々に切り。八の尾をことごとく切った。その中の一つに切れない尾があり、見ると氷のごとくになる剣あり。取りてみると、後の天照大神の三種のうちの宝剣である。この剣は近江国伊吹山で失った。(中略)

 スサノヲ尊、宝剣をもって、もとの斎所にもどられ、神たち集まり、この宝剣を天照大神に贈呈され、たいそう喜ばれた。その時、スサノヲ尊と天照大神仲直りした。
(中略)
 この宝剣は風水龍王の八つの尾の中の尾にあり。剣のあるところから煙立ちて叢雲のごとくに在るにより、叢雲の剣と名付けられた。

 その後、草木に火をつけ国土を焼かんせしを伝え聞き、この剣をもって草をなぎ払いたまう。この時より草薙の剣と申すなり。

■地神五代

ある時、彦火々出見尊が弟彦ソソリノ尊に釣針を借りて、兄の彦火々海原に出て、釣り針を海に入れた。アカメクチがこの釣針を食切る。御弟彦ソソリノ尊の持ち伝えの釣針なので、兄の彦火々出見尊、呆然と呆れていると塩土の翁と云うものが現れた。「吾皇子にて御身の御徳を忘れず。今現れ来たりなり。」その御礼をするため、ナメシカゴ(目無籠)と云うものに、彦火々出見尊を連れ奉り海中に招き入れると、ほどなく竜宮界に着きました。

 これまでの事を次第に竜王に申せば、「この世界に三年逗留すれば、その間に願いをかなえる。」申せば、彦火々出見尊「そのとおりにいたします。」と答えた。竜王「諸々の魚寄せ集めよ」とアカメクチに伝えれば、しきりに寄せ集められ、諸々やってきたアカメクチのその中に、頬腫れて異なる口を開けてみれば、釣針見つかり、その釣針を密かに取り、竜宮へ納めた。竜宮の娘と彦火々出見尊へ渡し。その釣針を取り出し、彦火々出見尊へ渡すと。その釣針を受け取り、夫婦共に竜宮を出で、海上にほどなく上陸し、彼釣針を御弟彦ソソリノ尊へ返した。竜王の娘と彦火々出見尊は夫婦となり、やがて豊玉姫は妊婦となり臨月となった。産所を造ってほしいといわれ、鵜羽をもって葺いた。葺き合せている最中に出産給し。これにより、この御子の御名を彦波瀲武鵜草葺不合尊と呼んだ。豊玉姫とお避けるうちは百日をまんしてよりご覧あれ、とお避けれともまじか子九十九日にあたるとき、彦火々尊、ものの隙間よりご覧するに、豊玉姫は大蛇となって、七又の角の上に その御子を置き、したをもって子降っていたのを彦火々出見尊が覗きみたことにより豊玉姫は御子を捨て海中に帰っていった。嘆き悲しむ彦火々出見尊のところに豊玉姫の妹 玉依姫が竜宮よりあらわれ御子を養育した、御子を玉依姫と甥の彦波瀲武鵜草葺不合尊はやがて夫婦になった。

 彦波瀲武鵜草葺不合尊は住吉大明神のことである。その御子住吉五神といは二人は女子 三人は男子 二人の女子の名前は表津少童命 中津少童命といった。男子の名は長男大祝先祖の名は表筒男 次男神天皇の名は中筒男 三男高良大菩薩の名は底筒男と言った。

 異国征伐の時、干珠 満珠で国土を治め、又皇宮で勾玉を持たせていただいた間 御鳥居玉垂宮とありました。大祝鳥居には大明神正一位といいました。大祝家は今までに比類なき家である。高良大井御記文にも五姓を定めること神部物部を比せんが為なり天代七代 地神五代より大祝家の系図は定まっていました。

※引用ここまで