蛇木(ははき)~箒(ほうき)を採物として舞う

採物とは、舞人が手にして舞う神聖な物であり、神の降臨する依代(よりしろ)です。手に採物を採って舞うという行為には清めの意味があります。それは同時に舞人が神懸(かみがか)りする手だてともなります。採物を手に持って舞うことにより、神力が発動すると考えられており、採物に降臨した神を舞人自身に降ろし神懸かりに至ります

天の岩戸における天鈿女命の神懸りも,笹葉を手草(たぐさ)に結ったとか、茅(ち)を巻いた矛を手に俳優(わざおぎ)したとされています。採物は、神楽、能楽、歌舞伎、舞踊などに継承されております。

古語拾遺に、「古語に、大蛇(おろち)を羽羽(はば、はは)と謂う」とあります。古事記には「天羽羽矢(あめのはばや)」とあり、大蛇のように威力ある矢、または大蛇を射たおす矢と考えられております。また、羽の広く大きな矢ともいうようです。スサノオが大蛇を斬った剣は、天羽羽斬(あめのはばきり、あめのははきり)とされております。天羽羽斬が大蛇を斬った刀であるので、羽羽矢は大蛇を射る矢と考えるのが妥当な気がいたします。

吉野裕子先生の説では、棒状のもの (刀剣、杖、槍、飾りを付けた棒等も含む) などはみな自然界の蛇神の表象であるされ、箒(ほうき)ほ本来「蛇木(はばき)」だということです。

私がはじめて手にした採物は箒でした。増益乃舞でまた手にすることになりそうです。