ネガな部分を徹底的に潰していく~駄目出しの大切さ~自分のできることをしないで、自分の能力には高すぎることをしようとする身のほど知らず。

 ■反省会

業務や行事などが終わったあとで、その内容について反省し評価する会。

f:id:orochinomai:20210728110135j:plain

海神

 私は、本番を終えた後の反省会で徹底的なネガティブ(否定的なさま。消極的なさま)潰しをやることにしています。駄目出し(もと演劇用語。欠点・弱点などを指摘すること)により、反省すべき点・注意点・訂正点を指摘し改善を促します。同じ失敗を懲りずに繰り返す展開にならないためにも、ネガ潰しを徹底しなければならないと考えております。継続ネガ潰しを元に鍛錬を積み、更にいいものにしていくという連続した流れが大切だと思います。

 

 もっとも、ネガを潰せばそれでいいのかというと、そんなことはありません。ネガ潰しは最低限やらねばならないことであり、ほんとにやるべきことはその先にあります。

 

神経症的自尊心(加藤諦三)より

 「身知らずの口たたき」と言う格言がある。身のほど知らずに大言壮語することである。

 神経症的自尊心とは巨大な自我イメージを周囲に認めてもらおうとすることであるとアメリカの著名な精神科医のカレン・ホルナイが言っている。簡単に言えば虚勢を張っている心理である。

 神経症的自尊心の強い人は本当の自信を身につける機会がなかったのである。例えば、親から十分に愛撫されなかった。弱点をも含めて自分の存在を認められなかった。自信がないから神経症的自尊心で自分を維持しているのである。

 本当の自信は人との心の触れあいと達成感から生まれる。彼らは人と心が触れ合わないで生きてきた。信じるものがなかったから。

 彼は人から、特別の注目を獲られるものと期待する。自分を特別に扱わないと不公平に扱われたと感じる。そこで怒りだす。彼は「自分はいつも人より特別に扱われるような資格があると思っている」とカレン・ホルナイは言うが、私はそれよりも自分が生きてきた道を彼は心の底で納得して居ないから「すぐに怒る」のだと思う。

 自分が自分の生き方を納得していないから、周囲の人に偉大な人間として扱ってもらいたいのである。つまり神経症的自尊心の強い人は虚勢を張って威張っているが、心の底では人が羨ましい。

 何よりも現実の自分と内面の壮大な自我像とが調和しない。そうすると何処か現実がおかしいと思い出す。他人は自分をその様に立派な人として取り扱わない。他人は自分を普通の人として取り扱う。すると酷く侮辱されたように感じる。自分が侮辱されることには敏感だが、自分が他人を侮辱していることには極めて鈍感である。それは他人を侮辱することで心が楽になるから、自分の心を楽にすることばかりに気を取られているから、他人の心の傷には鈍感なのである。

 他人はその人をその人が思っているほど凄い人だと思っていない。すると他人はその人を凄い人として扱わない。普通の人として扱う、すると、もの凄く傷つく。攻撃的な人なら、猛然と怒り出すし、内向的な人なら傷ついて自分の中に閉じこもるかも知れない。そして恨みに思うであろう。

 こういう人に「あなたは立派です、周りが悪い」と言う宗教があれば彼は心ひかれて入信して行くだろう。こつこつと地道な努力をしている若者にはない心理である。

 神経症的自尊心をもとにした自己栄光化は彼にとっては心の葛藤を解決する手段なのである。毎日が居心地が悪い、だから自己栄光化によって自分の城を作りたい。居心地の良い自分の場所を作りたい。

 普通自分の城を作ろうと思えば、土台を考える。この場合で言えば例えば心理的成長、或いは人脈等などである。自分の弱点を知り、長所を知ろうとする、それで強固な城が出来る。しかし神経症的自尊心を持つ者は毎日が不安だから、それらを見ないでとにかくお金と力等などで城を作ろうとする。

 自分の出来ることをしないで、自分の能力には高すぎることをしようとする神経症的自尊心の強い作家は自分が書ける本を書かないで、皆が羨ましがる大作家のような本を書こうとする。

 神経症的自尊心の強い人は勉強の仕方も間違える。自己栄光化は神経症的自尊心で、弱さの象徴である。

引用ここまで

 

 失敗するときはたいがい「身のほど知らず」になっているときだと思います。まず潰さなければいけないネガは自己栄光化願望です。内面の壮大な自画像を、現実の自分に調和させることです。

 ごくごく当たり前のことですが、観客に目が向いていない舞人は観てもらえません。単純明快な「返報性の法則(返報性の原理)=相手から受けた好意などに対し「お返し」をしたいと感じる心理」です。自己栄光化願望丸出しでつくった城に籠っている人に向けられる目は、凍りつくように冷ややかなものになります。自分が他人を扱っているのと同じように、自分が他人から扱われただけなのですが、その自覚がありません。

 神経症的自尊心が強すぎる状態でとった行動のほとんどは、とりかえしがつかないほど深刻なダメージを残します。だからこそ、同じ間違いを繰り返さないためにも、徹底的なネガ潰しが必要なのです。

 自己栄光化を維持しようとすれば逃げ出すしかありません。「卒業します」とかコメントする人たちがいますが、自己栄光化を維持するための逃避行動でしかありません。その後もまったく状況が改善されていませんから。高すぎる目的にこだわって自分のできることをしないので、むしろ年々状況は悪化の一途をたどります。

 巨大な自我イメージを周囲に認めてもらおうとするのをやめて、できることをきちんとするという基本を徹底していかねばならないと思います。