舞い方(後編)

■大左右・左拍子~おおざゆう・ひだりびょうし

 左右の変形で、扇を広げて行なうことが多い。大左右の場合は、左へ3足、右へ出る足は不定(5~7足)。右ウケより続き、最初、左へ出るときは右足を左足にかけて(ねじるときもある)、左足から左、右、左と3足出る。次に右へは、左足を右足にかけて向きを変える。曲により右へ出る足数が異なる。向きをかえるときに、体がぐらぐらしないように腰を水平に使って動く。

①右をうけ、両手を広げる

②右足をかけて、左へねじる

③左へ向き、左手は胸前へ出し、左足より進み始め、右手は下ろす

④左、右、左と3足進む

⑤そのまま、左足で拍子を1つ踏む(左拍子)

⑥左足をかけながら、右手の扇を上げ、右へねじる

⑦右足より右の方へ進む

⑧5~7足出たところで、正先の方向へ右足をかけながら扇を少し下げ、にぎりをゆるめる

拍子の踏み方:拍子を踏むときは、しっかり構えて腰が上下に動かないように踏むことが大事。足を上げたときに体が左右上下にゆらゆらしないよう、腰を安定させて踏む。足を上げる高さは、拍子の強弱によって膝の高さが変わる。強く踏むときは高く上げ、弱く踏むときは低くする。足裏全体を使うが、かかとの方で音を出すようにする。大きな音でもうるさい音はよくない。響き抜ける音がよい。

■大左右~正先へ打込(前に出る打込)

 大左右から続き、ワキ正から正先へ手前をえぐるように曲線を描いて出る型。進みながら打込の扇扱いをする。扇を頭上より体の中心線を通り腰の位置まで下げ、胸前でサシ込の形にする。ワキ正で向きを変えるときには、右足を左足のすぐ側に正先の方向より深めにかけ、その後ねじる足を使う。体がぐらぐらしないように腰を水平に使って動く

①正先より深めに向きをとり、扇を頭上より下ろし、

②手前をえぐるように、曲線に進む

③正先で扇を腰の位置まで下げる

④右手がサシ込、右足で止まる

扇の握り:扇を右横に出したとき、にぎったままではなく、親指をすべらせて扇をつまむように持ち替える。扇のにぎりをゆるめる、扇をはなす、または捨てるともいう。そのまま上へ上げ、下ろしながら元の持ち方へ戻す。

■開

打込みの後に、両手を大きく広げながら左右左と3足下がり、開く。

■サシ回シ・開

 サシは前方をさす型で、原則的には右手でいたし、扇は開閉どちらもある。左右と2足下がりながら扇扱いをするが、サス前の準備動作も含めての流れとなる。サシは扇が目的をとらえ、その延長に景色を示し、回シはさしたまま、右斜め前へふくらんだ曲線を描きながら3足出る型。開を伴う。

■角へ行・扇カザシ

 カザシ扇の原型は手をかざして遠くを見る形で、日常的な動作を舞の型に取り入れたと考えられます。常座よりサシたまま角へ進み、左足で止まり、次にカザシ。なれてくると、一連の流れで角で止まると同時に扇を扱い、カザシ扇に移る仕方をいたす。角で広げた扇をカザシ、気持ちを遠くへ向ける。カザシたときはひじが完全に伸びないようにする。

■打込み・下居・トメ

 舞の終曲に定型として行なう方。扇を上から前へ打ち下ろす動作で、後ろへ打込むとき(下がる打込)は左右と下がる。扇扱いは、出る打込みのときと同じ仕方だが、足の方はそれとは逆に左右と下がる。右足はそろえずに大きく引いて膝をつく。

①正面へねじりつつ、扇を右下へにぎりをゆるめ

②左足を引きながら、扇を横から曲線を描くように上げ

③扇を常の持ち方に戻しながら前へ下ろし、右足を深く引き

④そのまま体を沈め、下居の構えに

 

背中を大切に:鏡に向かって構えを正しても、見えない背中に隙が出る。前をつくろっても前面は直せるが、前面のみ心を配っても背中が定まらない。背中を意識することによって、自然に緊張感が生まれる。いつも後ろに緊張感を持って舞う。

舞姿:舞姿=構えは役柄によって異なるが、棒立ちとそり立ちは悪しき姿。やや前掛りの構えを基本と考える。