海神豊玉彦と阿曇磯良

■大綿津見神

 ワタツミ・ワダツミ(海神・綿津見)とは日本神話の海の神。「ワタ」は海の古語、「ツ」は「の」を表す上代語の格助詞、「ミ」は神霊の意であるので、「ワタツミ」は「海の神霊」という意味。転じて海・海原そのものを指す場合もある。

綿津見神(わたつみのかみ)、大綿津見神(おおわたつみのかみ)……『古事記

●海神豊玉彦(わたつみとよたまひこ)、少童命(わたつみのみこと)、海神(わたつみ、わたのかみ)……『日本書紀

 日本神話に最初に登場する綿津見神は、オオワタツミ(大綿津見神・大海神)。神産みの段で伊邪那岐命伊弉諾尊・いざなぎ)・伊邪那美命伊弉冉尊・いざなみ)二神の間に生まれた。伊邪那岐命、または同神と伊邪那美命の子に置かれる神で、子には宇都志日金析命穂高見命)、布留多摩命(振玉命)、豊玉毘売命、玉依毘売命の四兄妹がいる。神名から海の主宰神と考えられているが、『記紀』においては伊邪那岐命は後に生まれた三貴子の一柱須佐之男命(素戔嗚尊・すさのお)に海を治めるよう命じている。

 伊邪那岐命が黄泉から帰って禊をした時に、ソコツワタツミ底津綿津見神、底津少童命)、ナカツワタツミ中津綿津見神、中津少童命)、ウワツワタツミ上津綿津見神、表津少童命)の三神が生まれ、この三神を総称して綿津見三神と呼んでいる。この三神はオオワタツミとは別神であるとの説や、同神との説がある。この時、ソコツツノオノカミ(底筒之男神)、ナカツツノオノカミ(中筒之男神)、ウワツツノオノカミ(上筒之男神)の住吉三神住吉大神)も一緒に生まれている。

 山幸彦と海幸彦の段では、火照命又は火須勢理命(海幸彦)の釣針をなくして困っていた火遠理命(山幸彦)が、塩土老翁の助言に従って綿津見大神(豊玉彦)の元を訪れ、綿津見大神の娘である豊玉毘売と結婚している。

 

■細男

 古舞の一つ。青農、声納とも書き、「さいのお」ともいう。細男の由来については不明な点が多いが、海中をつかさどる神である磯良(いそら)の伝説と結び付いているために、多くその側面から論じられている。伝説によると、磯良は顔が醜かったので浄衣(じょうえ)の袖(そで)で顔を覆い首に鼓をかけて海中より出てきたという。『栄花物語』には「御霊会(ごりょうえ)の細男の手拭(てぬぐい)して顔隠したる」とあり、平安時代の細男は御霊会と関係があったと思われる。1136年(保延2)に始まると伝わる春日(かすが)若宮おん祭における細男は、その姿をいまによく伝えている。烏帽子(えぼし)・白浄衣・白覆面の6人が出て、2人は笛を吹き、2人は腰鼓(ようこ)を両手で打ち、他の2人は覆面の上を右袖で覆い舞い進む。白覆面と鼓は細男を特色づけているが、福岡市志賀島(しかのしま)八幡志賀海神社の磯良羯鼓(かっこ)の舞も細男であろう。また細男は人形にもみられ、福岡県築上(ちくじょう)郡吉富(よしとみ)町古表(こひょう)神社、大分県中津市伊藤田の古要(こひょう)神社には細男の傀儡(くぐつ)人形が伝承されている。細男と才(ざえ)の男(おのこ)が同一であるという説は、これを証する史料が見当たらないことから、この両者は異なるともいわれている。

日本大百科全書(ニッポニカ)[高山 茂]より

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消された大王 アントンイソラ
―安曇と阿部(阿倍)姓の王たちは日本書紀から封印されたー

1章 安曇磯良 白い覆面の神
2章 日本書紀に書かれなかった磯良の存在 各地の伝承から半生を描く
3章 各地に伝わる磯良と干珠満珠の記憶    
4章 中国正史に書かれた倭王・阿毎氏とは阿倍氏である
5章 高良玉垂宮で玉垂命(磯良)が高良の神(武内)に変わったのは白村江戦の十年後だった

歴史カフェ「アントンイソラ」の詳細です : ひもろぎ逍遥より

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阿曇磯良(あづみのいそら、安曇磯良とも書く)=志賀海大明神=阿度部磯良(あとべのいそら)

海の神。安曇氏(阿曇氏)の祖神。

春日大社に祀られる天児屋根命と同神。『八幡宮御縁起』

磯良ト申スハ筑前国鹿ノ島明神之御事也 常陸国鹿嶋大明神大和国春日大明神 是皆一躰分身 同躰異名以坐ス 安曇磯良ト申ス志賀海大明神 磯良ハ春日大社似祀奉斎 天児屋根命以同神『愚童訓』

安曇磯良は、筑前国では志賀大明神。常陸国では鹿島大明神大和国では春日大明神とも称され、 志賀島(シカノシマ)を鹿島と考える伝承がある。

天岩戸に隠れた天照大神を誘いだすために神楽に合わせて行なった滑稽な演技「せいのう」を猿楽の起源のひとつとして挙げている。『風姿花伝

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安曇磯良出現之図

安曇磯良、海流の中から亀に乗って出現したという場面。安曇磯良は、満珠・干珠の珠を使って潮の干満を操って皇后軍を助けたとされる。