自分のまわりに境界線を引く~歩行で結界を張る~足踏み・引きずり

古代舞の足さばきには、歩行呪術がとりいれられております。一定の方則に従って足を踏み歩行する=足さばきをする作法には、呪術的な効果があると考えられていたそうです。

・四股(醜足)

・田楽

・神楽

・申楽(猿楽)

念仏踊り

・六方

そして、反閇と禹王の歩行法。

古代においては、邪霊悪鬼を鎮め祓い浄める歩行法・足踏みがおこなわれていました。邪気を踏み破り鎮め、そこから吉祥を呼びこもうとしたようです。歩行によって結界を張っていたと考えられています。

原初的歩行呪術である激しく足を踏み鳴らす「だだ=達陀」は、現代のダンスでもよく見られる、擬音であらわすと「ダダ、ダダダン」とかが使われる系統のステップにつながっているように思います。

足を引きずる作法は、子供が地面に足で線を引いて、「こっちは僕の陣地」とかやる感覚に近いと思います。舞踊の「おひきずり=裾引き着物」の足さばきも、元は何らかの呪術だったのではないかと思います。

f:id:orochinomai:20201207095929j:plain

おひきずり

すり足は、大地の霊に尊祟の念をあらわす行為が源流との説もあるようです。

林達夫さまの「楽器が自らの音の調べとリズムを主張するとき、人の身体、人の身振りや身のこなし方にも干渉し、注文をつける。わが国の芸能においては、スリ足で舞い舞いして、なかなか大地からはね跳ぼうとしないのは、楽器の発達が縄文以来、控えめに終始してきたことに遠い由来があるのかもしれない」という説も興味深いです。

古式の舞は、腰低く重心を落とし重々しく舞われます。股を割り腰をいれる「地霊を鎮める所作」が見られます。「二畳で舞え」と言われる「足の裏を見せないすり足」が特徴です。腰から両足の足裏まで地に密着した重心の低さが鎮めにつながるように感じます。

力士が地から天にせりあがり、力強く四股を踏み、「地の負(陰)」を鎮め、「天の勝(陽)」を祈りあげる呪術的作法も、現代に残っております。