品が悪くなったらおしまい。綺麗にやっていく。贅肉を落として神楽をすっきりさせることが大切。

八百万の神々~神楽面の世界より

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八百万の神々~神楽面の世界 江戸里神楽公演学生実行委員会

ご自分の顔を鏡でご覧ください。顔の左と右が不対称になっていることに気が付くと思います。能面の写真を見てください。どうでしょうか。面の左右がやはり不対称的につくられています。目の位置も見比べてみてください。左右の高さが違っています。鼻も少し曲がっています。それから口も曲がっています。

この面の微妙な不対称性、このことで能面はいろいろな表情を見せることが出来るのです。面を左右対称にしない、これは表情を豊かに見せるための面制作の技法として伝えられています。

もう一つ、不対称性を形式的にですがはっきりと意識されて作られている面をご紹介します。重要文化財梅若六郎家所蔵・伝日光作の黒式尉です。向かって左側の皺は下に向かっているのに、右側の皺は上がっていることにお気づきだと思います。

さて、時代は上がって縄文時代後期の岩手県二戸群一戸町、蒔前台遺跡の仮面を御覧ください。これも明らかに左右不対称に作られています。日光中尊寺所蔵の姥。福井県山方郡江村嘉六所蔵の三番叟など民間の仮面にも左右の不対称性という特徴を見いだすことができます。

 

神楽面はどちらかと言えば明るい面だ。能面は全部、抑えた面で寂しい。そういう違いがある。ただ、能面はものを言っている。ちゃんと神楽面もものを言っていないといけない。神楽には笑いと涙があるが、能には笑いはない。神楽の運びには日本舞踊、能狂言、歌舞伎の要素が詰まっているように、能とは違っている。しっかりと線を引いておかないといけない。神楽だか、能だかわからなくなっちゃうことはよくない。

まず、江戸の神楽は品が悪くなったらおしまいなんです。江戸の神楽は品です。だから、きたないことは駄目。それからやり過ぎは野暮。その手前で抑えることが大切なのです。手まねも綺麗にやっていくのが江戸の神楽。

神楽は古典だから、崩さない。このままでいくこと。あれこれ考えると神楽が崩れるので今の通りやること、違わないようにやること、それから江戸の神楽はダレることを嫌う。いたずらに長く演じない。囃子もメリハリをつけること、体のさばきもメリハリをつけること、贅肉を落として神楽をすっきりさせることが大切です。

神楽はアドリブの部分が多く、演ずる者の自由度が高いので口伝、見て覚える形式で伝承されていきます。ですが「形」へのこだわりが相当強い芸能です。

ダレナイ神楽(だらだらと演じない)を追求する江戸里神楽は神楽演目の上演時間を短縮し、さらに役面を導入して演じ手の意識も変革していったようです。

引用ここまで

 

江戸里神楽の面が好きで、舞でつけております。私も、品が悪くなったら終わりだと考えております。贅肉を削ぎ落としてすっきりと、綺麗に舞いたいと思います。